1月15日(土)に"たまに"の本拠地(@文京区本駒込)で開催したイベント「マステアートでだらだら遊ぼう!」。ゆったりとした時間の中にもワクワクありほっこり感ありの、穏やかで豊かな時間となりました。ご参加くださいました皆さまに改めて感謝申し上げます。
当日の様子や気づき、今後に向けての問いなどを整理しましたので、よろしければぜひお読みください!
1. 当日の様子
舞台は、たまにの本拠地(@文京区本駒込)の外壁。昨年11月に2日間に渡るワークショップで、延べ70名近いみなさんと共同で作り上げた「どデカイハート」周辺の壁を使って、マスキングテープアートで引き続き楽しんでしまおう、というのが今回の主旨。前回同様、屋台で"たまにカフェ"も併設したのですが、寒い季節ですし、コーヒーよりもこれかな?ということで、おしるこをお作りし無料でご提供しました(無料でご提供している背景についてはこちらの記事をご覧ください)。
今回は、ご近所さんを中心にのんびりやってみようということで、告知は、イベント実施の2日ほど前のLINEとInstagram、当日の看板だけに留めて実施しました。結果、3時間の間に、当日看板を見てふらりとお立ち寄りくださった6名を含め14名の方がマスキングテープアートに参加してくださり、その上なんと、どデカイハートのワークショップを取り仕切りつつ作品を仕上げてくださったアーティストの西村さんのうれしいドタ参もありで、ゆったりとしながらも充実したいい時間を持つことができました(ぜひ記事の一番下の写真を見てみてください。ハートの下に、西村さんが作ってくださったジンベエザメと一緒に、西村さんと私(佐竹)も泳いでます(笑))。
お配りしたおしるは25杯(白米と玄米の小さなお餅を一個ずつ入れました^^)。それに加えて、ご近所さんには10軒以上お裾分けしたんじゃないかな。なにせ、せっかくだからと2kgの小豆を炊いたんですよ、北海道から取り寄せて。これがもう美味いのなんの。おかげで、ご自宅からお鍋や器を持ってきていただいて大鍋からお裾分けするという、昭和感満載のおおらかでほのぼのとした光景が広がりました。
2. ささやかな試み
現時点で"たまに"が行っているささやかな実験的な試みの数々は、代表佐竹の大学院での修士研究をベースとしながらも、企画段階からの仮説と思いつきとを織り交ぜながら、目指すべき方向性にたどり着く道を模索しながら進めています。
ここでの「目指すべき方向性」とは、今のところ「ご近所さんのゆるいつながりを生み育てられる、モデル化可能な仕組みの設計を見い出すこと」なんですが、ささやかであれ意図を持って実際にやってみると、様々な気づきが得られます。はっとするほど新鮮なものもあれば、頭でわかっていたことが目の前に立ち現れてなるほどと腑に落ちることもあるし、時間が経ってから気付かされることもある。
そんな中で、今回は何を試してみたかというと、大小含めて下記の5つがありました。
- 前回のマスキングテープアートのワークショップからは一線を画す形で、「ご近所さん」にぐっと寄ってみる
- コーヒー以外を振る舞って試してみる
- ワークショップワークショップせずにゆったり楽しめるかやってみる
- ミニマムのスタッフで安全にできるか様子を見てみる
- ご近所さんをちょっとだけ頼ってみる
1については、冒頭に書いたとおり、範囲をぐっと狭めて、基本、LINEとInstagram(登録者数、follower数ともに30とちょっと)と当日の看板のみに絞って告知を行いました。登録者数やfollower数がこれだけ少ない中での試みとしては、まずまずだったんじゃないかなぁと思います。町会の掲示板等で告知することも選択肢としてはあるけれど、イベントの質や主催者側の負担も見ながらチューニングしていく感じかなぁと思っています。
2については、先述のとおり「おしるこ」を試してみたわけですが、これが意外と面白い発見がたくさんありました。
小豆の費用は今回ちょっと奮発していいのを買ってしまったので2kgで4,500円程度でした。一見高く見えるけど、お裾分のしやすさ、喜んでいただきやすさを考えると、価値も高かったと思います。世の中にはおしるこが大好きな方が少なくないというのも予想外の発見のひとつ。コーヒーでは、小鍋やどんぶりを持ってもらいに来てはいただけないですしね。人をつなぐ力の強いコンテンツだし、一度に大量に簡単に美味しくできて、と予想していた以上にハッピーなトライアルでした。
3と4については、もうその場に任せてやってみようという感じでものすごくざっくりと構えていたのですが、いくつか考察の余地のあるポイントだったなぁと思っています。どうすれば、いかにもワークショップという構えをせずとも楽しんでもらえる無目的に近い設定のイベントが、人それぞれに楽しんでいただける包容力を持てるんだろうか、であるとか、運営上人数が足りているかどうか、あるいは、運営している側がいい感じで楽しめるかどうか、という観点でも、新たな問いや視点を得ることができました。
5については、今回、LINEを通じてお餅を焼くオーブントースターをお借りできないか伺ってみたんですね。直ぐに反応してくださった方たちがいて、実際にお借りすることもできてとてもありがたかったし、御礼におしるこをお渡しできたのもまたよかった。次の「今後に向けての問い」にもつながるところですが、近所さんならではの頼ったり頼られたりという関係性を、これからどのように構築していくか、いろんなアイディアを試しつつ、丁寧に組み上げて行きたいなぁと改めて考えています。
3. 今後に向けての問い
参加者同士が知り合うきっかけをどう生み出すか
私たちは今のところイベントの中に参加者同士が交流する仕掛けをまったく埋め込んでいないので、密度が比較的粗だった今回のイベントでは、参加されたみなさんが交わるきっかけがない。密度を改善するのか、何かしらの仕掛けを埋め込むのか、あるいは現状これで良しとして、回数を重ねて数が増えていく(会場内のご近所さん密度を高めて)いくのか...様々な選択肢がありますし、目的やターゲットやコンテンツによりデザインは変わってくるかと思っています。
ただ一方で、こと日本においては、あるいは日本の都市部においては、ということになるのかもしれませんが、放っておくと知らない人同士は接点を持ちづらい。前回のマスキングテープアートの時も、たくさんの方たちが来てくださいましたが、新たな出会いというのはあまり生まれていない印象です(もちろん、ひとことふたこと言葉を交わすことはあるのですが)。
"たまに"としては、無理やり人をつなげたいなどということは考えていないのですが、それでも、なんとなく空間を共にしている方たちとの関わりが持てて、会を重ねていくうちにそこそこ気の合うご近所さんがひとりふたりと増えていくような仕掛けを埋め込んで行けるといいなぁと考えています。
互いにGiveしあう関係性を構築するためのメカニズムをどう埋め込むか
前回の定泉寺での"たまにカフェ"のレポートでも触れましたが、場を作る側(ホスト)も参加する側(ゲスト)も、お互いに主体的に何かしらGiveする仕掛けを埋め込むことが、場の豊かなにつながると考えています。たとえば、佐竹の修士研究においてそれは、「向社会的行為(Prosocial Behavior)」が生み出すポジティブなフィードバックループという概念を用いて表現され、検証実験も行いました。
最終的にこの研究では、ホストとゲストが互いにGiveし合う形を取ることにした。いびつな優越感や負担感を極力生まない、その代わりにポジティブな思いをフィードバックし合える「気持ちのよい」循環を生むしくみを目指したのだ。結果的に、検証のための実証実験では予想以上によい結果を得ることができた。
たまにまで うらら編その2 研究してみてわかったこと 前編(2021.5.13投稿)より
このあたりの詳細は後日別途記事にしたいと思っていますが、同様の見解につながる研究は心理学の領域においても[1]、場作りやワークショップ、地域活動の研究等においても[2]繰り返し言及されています。
こうした仕掛けを、周囲を楽しく巻き込んでいきながらどう作っていくのか。いろんなやり方が考えられると思いますが、私たちらしいやり方で、じっくりと探っていくことになりそうです。
"たまにカフェ"は、今後とも、たまーに開催予定です。場合によっては直前のお知らせなるかも知れませんが、LINEやINSTAGRAMで告知しますので、よろしければぜひ、まずはオンラインでつながっていただけたらうれしいです。"たまに"の活動を通じてみなさんにお会いできる日が来ることを、心から楽しみにしています。
文:佐竹麗
●脚注●
[1]たとえばデシ理論など。Edward L Deci and Richard Flaste, Why we do what we do: Understanding self-motivation (Penguin books London, 1996)
[2]山田広明, "地域コミュニティの自発的形成・維持メカニズムとその設計に関する研究," (2016)., 坂倉杏介・保井俊之・白坂成功・前野隆司, "「共同行為における自己実現の段階モデル」 による 「地域の居場所」 の来場者の行動分析: 東京都港区 「芝の家」 を事例に, 地域活性研究," 地域活性研究 4 (2013).等