それぞれの「いいこと」が、未来の「いいこと」であるために

2024年4月、一般社団法人"たまに"は、システム思考を軸とした人材育成プログラムの提供を開始しました。そこでこの記事では、"たまにカフェ"に代表される"たまに"のこれまでの試みとはちょっと毛色の違う人材育成事業のローンチにあたり、その背景について今の私たちなりに言葉にしておきたいと思います。

"たまに"は、2021年の春に小さな一歩を踏み出し、以来、「気が向いたときに気が向いた人が、自分にとっても誰かにとっても"ちょっといいこと"をしやすくするしくみ」の研究開発と提供をミッションとして、コツコツと活動を重ねてきました。「たまにカフェ」に代表される私たちの活動は、簡単にお金を生み出すようなものではありません。それでも私たちは、"たまに"の素朴とも言える活動を、飽きもせず心から楽しんできました。

私たちが、短期的には金銭的な見返りの乏しい事業であっても、活動の方向性を見失うことなく、価値の創出を楽しみ続けて来られたのはなぜなのでしょうか。

理由のひとつは、活動を通じて、たくさんの笑顔と、その瞬間そこでしか生まれようのない美しい光景に出会うことができるから。日々の活動の中で期せずして生まれる奇跡のような場面に立ち会うことは、私たちに、ここにしかない大きな喜びを与えてくれています。

もうひとつの大きな理由は──これが、この記事の重要なポイントなのですが──、コアメンバー全員が、「システム思考」と「システムズエンジニアリング」の使い手であることだと考えています。これらのアプローチは、私たちの活動が、現在にとっても未来にとっても、参加された方々にとっても自分たちにとっても大きな価値をもたらすことを、メンバー全員が確信することを助け、同時に、常に求められる創意工夫を、豊かで学び溢れるものにしてくれています。

日々の活動の中でシステム思考やシステムズエンジニアリングのパワーを実感するうち、私たちは、より多くの方たちにシステム思考の考え方を学び実践していただけたら、との思いを深めていきました。

そして2023年、システム思考を軸とした人材育成プログラムの開発に着手。2024年4月より本格提供を始めました。

私たちが情熱を注ぎ工夫を凝らしてご提供するものですから、このプログラムはいわゆる"研修会社"が提供するものとは、内容も雰囲気も大きく異なるものです。「脳」も使えば「心」も使う。それも惜しみなく。とびきり"たまに"らしいオリジナルなスタイルと内容で、ご縁をいただいた企業さんとともに、人と場とを丁寧にあたため、参加される皆さまが持っていらっしゃる潜在的な力がより発揮されるよう、精一杯お手伝いしていきたいと考えています。

システム思考とは、複雑に絡み合う問題の全体像を捉え、構造とダイナミズムを理解するためのアプローチです。システム思考を通じて物事を捉えることで、個々の行動や局所的な改善と全体とのつながりが見え、具体的で、かつ、全体にとっても望ましい活動が見えてきやすくなります。

システム思考を通じて、組織が前提として捉えるべき制約や、関係者の考え方や行動のクセ、思い込みなど、実に多くのリアリティが浮かび上がってきます。"今起きていること"を生み出している背景が明らかになれば、前向きに力を合わせて効率よく変化を起こすことができる。システム思考のマインドセットを持つ人材を育てることは、組織全体の未来をあるべき方向へと導く選択です。

それぞれの「いいこと」が、組織にとって、そして、未来を生きるすべての人々にとっての「いいこと」であるために。

企業向け人材育成プログラム「組織が変わるシステム思考」動画シリーズ「世界が変わるシステム思考」が、いつかあなたご自身やあなたの所属する組織のお役に立てることを心から願っています。

文:佐竹麗