一般社団法人たまに設立に至った背景を、設立メンバーのふたりがそれぞれの視点で書いていきます(ルコ編は全3回)。少し長いですが、ふたりの設立までの道のりや、"たまに"の活動に込めた思いの一端を、みなさんと共有できたらうれしいです。
たまにまで ルコ編その1はこちら
肩書きについて
「一般社団法人たまに」では理事だけれど、他の場所でも色々させてもらっていて、結局自己紹介の時には「フリーのムードメーカーです」と名乗ることにしている。「ムードメーカー」という肩書きをつけて活動するようになったのは2018年の春だ。当時の上司が好きな肩書きをつけて良いよと言ったので、自分で決めて名刺に入れた。
昔から「真鍋さんはムードメーカーだね」と言われることが多かった。しかしそう言われるたびに少し傷ついていた。ムードみたいな形のないものをつくってるだけじゃなくてちゃんと仕事もしてるつもりなんですけどね、と思っていた。「ムードメーカー」に対してそれほどポジティブな意味を私は持っていなかったのだ。それより「リーダーシップを発揮している」とか「◯◯のプロジェクトリーダーとして頑張っている」とかの方がよかった。
2018年の正月に、当時通っていた大学院の先生からお年賀のメールをいただいた。そこにも「真鍋さんはムードメーカーで」と書かれていた。絶望した。勉強も研究もがんばってんのに、また「ムードメーカー」って!!多分他のことも色々書いてくださっていたと思うのだが、目に入ってこなかった。
こんな印象しか残せない自分が本当に嫌で、どう覆そうか悩んで、結局、最後には、開き直った。
「すごいムードメーカー」になればいいんじゃないか?めちゃくちゃ本気で意味のある「ムード」をつくればいいんじゃないか?私自身が「ムードメーカー」の価値を上げ、唯一無二の肩書きにすればいいのでは?
先生ありがとうございます。そんなわけで「ムードメーカー」を名乗るようになりました。
大学院での研究
件の先生がおわす大学院で私は「どうすればよいコミュニティをつくることができるか」を研究テーマとした。これは当時勤めていた組織のミッションでもあったが、同時に私自身の課題でもあった。
大学院に入る前、複数のコワーキングスペースを見学し、コミュニティのあり方を観察したり、何人かの関係者にインタビューをさせてもらった。そこで分かったこととその後の研究においても私が持ち続けたインサイトは、「コミュニティマネジメントが重要である」ということ、そして「コミュニティメンバーが少しずつコミュニティマネージャーの役割を担うことがコミュニティ活性の鍵」だということだった。コミュニティの中にいる参加者がコミュニティに所属するメリットを享受するだけでなく、少し貢献的な活動をすることが重要だということである。
組織行動論では自分の役割や職務の範疇外のことをすることを「組織市民行動」と言い、個人や組織の業績にポジティブな影響を与えるとしている。小難しい説明はおくとして、それぞれのメンバーがそれぞれの判断で組織に貢献し、その貢献に対し見返りを求めないということが大事だという。
コミュニティと組織は異なるが(このあたりもややこしいので今は傍におく)、複数人が集まって何かしようとするとき、他者に目を向け、自分の役割外のことをしようとすることが、物事を円滑に進めていく。当たり前のことのようで、実際できている人が少ないように思うし、そういったことが自然にできにくくなりつつあると感じる。
無理なく貢献できるような場づくりが必要だし、たまにで進めていくべきことのひとつだと考えている。
行動指針みたいなもの
私のギフト(天性の才能や能力といった意味)は「遊ぶこと」だそうだ。人のギフトが見えるというエミさんという方にそう言われた。子どもが遊ぶように仕事をして人生を生ききることで、人に価値を与えることができるし自分も満足するということのようだ。私はこれがとても気に入っている。
単純に何かして「遊ぶ」ということも大事だし、工学的な「遊び」、つまり何かと何かの接合面に意図的につくる余裕であったり、物事の噛み合わせを吸収するための空隙のようなこともとても大事だと思っている。個人として迷ったり考えたりするための余裕が必要だし、人間関係もぎちっとしたものより緩い方が居心地がいい。時間的にも空間的にも隙間があったほうが、突然の物事に対処ができるというものだ。
ということを言い訳にして仕事もあまりしないようにしていて、たまにもたまにしかしないつもりです。
その3につづく
文:真鍋薫子
イラスト:斉藤重之