一般社団法人たまに設立に至った背景を、設立メンバーのふたりがそれぞれの視点で書いていきます(うらら編は全4回)。少し長いですが、ふたりの設立までの道のりや、"たまに"の活動に込めた思いの一端を、みなさんと共有できたらうれしいです。
たまにまで うらら編その1はこちら その2はこちら その3はこちら
変わらない性質を捉えて、遊び心を持ってつきあう
2020年1月。研究がやっと形になりつつあった頃、コロナの暗雲が世界を覆い始めた。
3月末に予定されていた大学院の修了式もあっさりとキャンセルされ、怒涛の2年間から解放された晴れやかさや感傷に浸る間を与えられないままに、非日常的日常が、新常態という新たな概念とともに暮らしを一変させようとしていた。
あまりに多くのことが手探りだった3〜5月。研究をベースに非接触で何かできないかと、大学院仲間の力を借りて、試行錯誤を繰り返した。様々な情報から学びもした。それらを経て、ある時腹落ちしたのは、本質はそう変わりようはないという、これまた当たり前のことだった。
テクノロジーを起点とした変化のスピードは、否応なく加速していく。それは人類の総体としての摂理ともいえ、個々人では抗うことはできない。だが一方で、人間の生き物としての欲求や性質は、そう急には変わらない。どんなときにうれしいか、どんなときに満たされた気持ちになれるか、あるいは、どんなときにせつなさや怒りを感じ、どういうことに敏感でどういうことに鈍感かetc...。
梅雨の晴れ間のある日、そうした、私たちが持つ変わらない性質と遊び心をもってつきあいながら、私たちの今と明日をより豊かにする取り組みに可能な限り体重を乗せていこうと決めた。いや、決めたというよりも、気がついたときにはすでに決まっていた。そして、自宅でリアルにゆるく集うなかでつながりを生み出すしくみのプロトタイプテストをしはじめた。
やがて秋になり、修士研究を始めたときからイメージを持っていた「たまに」という法人を立ち上げるべく歩みを進めはじめた。気が向いたときに気が向いただけ、自分にとっても誰かにとってもちょっとしたいいことをするしくみを社会に拡げていく事業体。ずっとじゃなくていい。でも、気が向いたときに誰かにとってちょっといいことを実行できる。そんな機会を楽しんでくれる人たちが増えれば、等身大のゆるいつながりが増え、笑顔が花開く時間も増えていく。そしてそれだけできっと、今も未来も確実に変わる。そんな確信めいた思いがあった。
似ていて違う、相棒との出会い
一緒にこの会社を立ち上げることになったルコちゃんは、大学院の一学年先輩(人生は私の方が少しだけ先輩だけれど)で、コロナ下で家族の次に多くの時間を共にしてきた人だ。様々なプロトタイプテストに、一番強い課題感を持って参加し、支えてくれていた。私とは、本質を捉える眼差しや課題感、仕事に対する考え方が近くて、でも、見た目も性格も結構違う。
「あなたは、あなたと似ていて、でもあなたみたいには強くない、もう少し柔らかな人と一緒に何かをするといいよ」。もう何年前になるだろう。尊敬してやまない、今は亡き医療系編集プロダクションの経営者に、そう言われたことがある。
ゆくゆくは経営を託すことを前提に会社にジョインしないかとのお誘いを、丁重にお断りした後のことだった。今にしてみれば彼の遺言みたいなあの言葉を、私は、ルコちゃんと会社を立ち上げることになって繰り返し思い出した。
もちろん、ルコちゃんだってたくさんの強さを持っているし、頑なな面だってあるだろう。でも、体も態度も大きくて、猫をかぶっていないと(もとい、猫をかぶろうと努めても)すぐに人に怖がられてしまう私とは違って、ルコちゃんが、「ムードメーカー」の肩書きにふさわしい柔らかさと愛らしさの持ち主であることは間違いない。
たくさんの時間を共にして、議論したり試したり遊んだりするうちに、私は勝手に、探していた人生の相棒を見つけたような気がしていた。
たくさんの"たまに"で、色とりどりに未来を満たす
法人名は"たまに"。ロゴのモチーフはカレンダーで、たとえば1ヶ月のうちに2日、気が向いたときに、自分にとっても誰かにとってもちょっといいことを、私たちと一緒にしてみない?という私たちからのみなさんへのお誘いと、そうした思いを全力でサポートしたいという意思とが込められている。
事業内容はこちらにご紹介してあるので、ぜひご覧になり、気になることがあれば気軽にコンタクトをしてみてほしい。
みなさんには、たまーに"たまに"を思い出していただけたら十分幸せだけれど、私たちはきっとずっと、この活動に心を注ぎ続けて、変化させ続けていくだろうと思う。
ひとりひとりの"たまに"が幾重にも重なり合うことで、色とりどりに、地域を、社会を、そして私たちひとりひとりの心と人生とを満たし続けていく、そんな未来を目指して。
たまにまで うらら編 おわり
文:佐竹麗
イラスト:斉藤重之